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2011年10月 8日 (土)

社会構造の変化 - 新聞王ジラルダン

(T)

社会学の先生に紹介されて新聞王ジラルダンを読んだ。

エミール・ド・ジラルダンは19世紀の新聞王である。この新聞王がジャーナリズムに与えた影響は大きい。本書はその事実を分かりやすく紹介している。

読み物としても面白いのだが、「社会と情報」に関係する部分もある。

気になる該当箇所は以下の通り。

1.ジラルダンの新聞第一号「ヴォルール」は剽窃新聞であった。

これに関しては本書P.46を引用してみる。

 それに、当時のジャーナリズムの状況もジラルダンに味方していた。すなわち、この頃は、政治党派の機関紙から、演劇のゴシップ新聞にいたるまで、どの新聞も多かれ少なかれ剽窃記事で紙面を埋めていたので、剽窃の被害者が同時に加害者でもあるような事態もいたるところで発生していた。いちおう、文学作品の著作権については1793年7月19日の法律があったが、この法律の解釈は極めてせまく、適用は独立した著作を無断で出版したような場合に限られ、一部引用や定期刊行物での引用についてはなにも触れていなかった。一言でいえば、無断引用にかんしては一種の紳士協定が存在し、ジラルダンはただ、これを公然と、しかも自ら高々と宣言して行ったにすぎないのである。

新聞王ジラルダン

剽窃と無断引用が混同されて書かれていることに注意が必要である。現行の著作権法では引用要件があり、無断引用は著作権侵害ではない。ただ、当時の著作権法では引用や剽窃に関する法律は無かったようなので、この記述は誤りとは言えないだろう。

商業ジャーナリズム「ヴォルール」の誕生と弱い著作権が関係していた事は興味深い。著作権が強く設定されれば利益は守れるが、「ヴォルール」のような新聞は生まれにくい。著作権が弱く設定されれば利益を守ることは難しくなるが、「ヴォルール」のような新聞は生まれやすい。これはトレードオフの問題である。

深読みすれば、既得権益側であれば著作権は強い方が良いし、イノベーター側であれば著作権は弱い方が良い。「社会と情報」でここまで踏み込むかは要検討ではあるが。

2.印刷技術や物流の発達が新聞の速報性と強く関連していた。

印刷技術や物流はジラルダンの駆け抜けた19世紀に各段と進歩したようである。新聞が高級品で一部の人だけが読む物から一般大衆が日常的に読む物へと変化した。技術発達が新聞の役割を変え、社会構造を変化させたともいえる。新聞社のフィルターを通してはいるが、情報は人伝えに得るものではなく新聞というメディアを通じて得るものへと変化した時代であろう。

3.予約購読制の新聞が情報インフラの役割を果たしていた。

予約購読制にすることで、毎日のように様々な情報を目にすることになる。新聞が当時の人々にとって重要な情報インフラになっていたと考えられる。情 報社会における新聞やテレビ、ラジオ、ネットニュースの先駆けと言える。内容が多岐に渡っていることも、情報社会における情報インフラと同様だ。 Yahoo! JAPANのトップニュースが硬軟が混ざっていることは典型的な例である。

4.新聞に広告を入れるというビジネスモデルを確立していた。

新たなビジネスモデルの確立は社会構造に影響を与える。広範な地域に対して同一の広告を流せる事は、積極的な情報の同時発信と言える。新聞側にすれば広告料という固定収入を得ることになり、安心して新聞を発行する事が出来る。読者は欲しい商品があれば連絡先に注文すればよい。プッシュ型通信販売の原型とも言えよう。

■まとめ

ジラルダンの送り出した新聞によって情報流通やビジネスモデル、社会構造が変化した。情報社会は変化し続けている。情報技術という側面だけでなく、社会構造の変化にも注目した授業も大切だ。情報科教員にとって重要な課題である。

(T)

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