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2011年12月29日 (木)

第1回情報学教育推進コンファレンス

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(T)

情報学教育関連学会等協議会の発足に伴い開催された第1回情報学教育推進コンファレンス(PDF)に参加した。

この協議会は学会等の団体を会員とする協議会である。発足時の加盟団体は

  1. 日本情報科教育学会
  2. 日本教育工学会
  3. 教育システム情報学会
  4. 情報処理学会
  5. 情報学教育研究会

である。1.~4.は有名どころで情報科教員なら一度は名前を聞いた事なる学会であり、5.は代表世話人である松原先生が主催の研究会である。

メインイベントはパネルディスカッション形式の公開会議。

公開会議 (パネルディスカッション方式)
テーマ:情報学教育の中長期的な展望

登壇者
 永井克昇(文部科学省 視学官)
 岡本敏雄(日本情報科教育学会 会長)
 永野和男(日本教育工学会 会長)
 前迫孝憲(教育システム情報学会 会長)
 筧 捷彦(情報処理学会 情報処理教育委員会 委員長)
 河野卓也(情報学教育研究会 副代表)
司会
 松原伸一(日本情報科教育学会 副会長,情報学教育研究会 代表)

豪華登壇者である。別の意味で奮起した。

1.ポジショントーク(7名)

歴史も趣旨も異なる団体がそれぞれの立場から思い思いの事を話していた。基本的にはバラバラ感を確認した感があるが、これは自然な事である。

ブログに残しておきたいのは、時間やらスライドやらポジショントークが残念だった事だ。各団体の所信表明的な意味合いもあるのだろうが、実質的に言いたい放題と言ったところ。発表時間のバランスは残念だったし、相変わらずプレゼンテーションスライドは一部を除いて残念だった。

ポジショントークの内容にも疑問が残る。以下、列挙する。

(1)文理融合の情報学

ウッズホール会議に出席した人の専門分野は文16、理16、芸術2であったことを踏まえ、情報科の親学問としての情報学は量的(≒理系的)と質的(≒文系的)のハイブリッドであろうという提案があった。情報学を学際的に捉えるというベクトルは正しいと自分も信じている。

しかしながら発足時の加盟団体の色合いからは文・理・芸のハイブリッド感は見えない。フロアからもこの点は指摘されていたが、今後の課題であるにとどまった。今後を見守りたい。

(2)センター試験との関係

教科情報をセンター試験に入れることで、きちんとした教科として認められるとの発言があったが、私は大いに疑問だ。保健体育科の保健や芸術科の音楽・美術・書道・工芸、家庭科は情報科と同じ必履修科目ではあるが、これらはきちんとした教科として認められていると考える。情報科の評価が低いのはセンター試験に採用されていないからではなく、その授業内容に課題が山積しているからだ。(他教科に課題がないという意味ではない)

必要悪といった政治的な手法の是非はともかく、政治的な立ち回りがかえって情報科の状況、ひいては情報科の授業を受ける生徒達にとってマイナスになることを憂慮する。

(3)授業内容の話

教育中央審議会や学校内、世の中からは、情報科に対して利活用を教える事が支持されていて学問的な内容は支持されなかったという報告があった。

しかしながら、「だからどうである」という主張が無かったのが疑問だ。様々な調査や統計資料から現状把握は出来たとしても、ブレイクスルーは起こり得ない。

情報科は普通の人達だけでなく情報科関係者にとっても未開の地である。外野の言動に振り回されているほどの余裕はない。授業を受けた生徒達や授業を見た人達が「日本には情報科教育が必要だ」と思えるような授業をすることの方が先決である。授業というコンテンツが無ければ、政治的な立ち回りは無様なだけである。

(4)教員養成課程の話

他のポジショントークを受けての形になっていたが、情報科教員の養成課程が抜けているという指摘があった。小中高でK-12を考えるのではなく、小中高大のK-16を考えるべきだとの主張だ。

確かに、大学を卒業して就職する人が多い事を考えると、広い意味での人材育成という観点から小中高大という一気通貫は重要な理念である。

しかしながら、「他教科でも一気通貫は実現していない」だけでなく、「教員養成が大学の4年間で十分とは考えにくい」と考える。情報科で扱う内容は多岐に渡る深い知識と技術が必要だ。「社会と情報」と関係の深そうな10の専門分野 ※ただし理工系を除くでもコメントしたが、大学4年間でカバーできることには大きな疑問符がある。数学科の学生が数学の教員免許を取得するのとは状況が随分事なるのだ。

(数学科でさえも大学4年間で間に合っているか、個人的には強い疑問を持っているのだが・・・)
:-P

2.質疑応答

質疑応答の時間はあったのだが、フロアからの質問には答える時間は全くなかった。コメント言いっぱなしであり、質疑応答ではなかった。

結果、公開会議ではなかった。
残念・・・┐(´д`)┌

■まとめ

このコンファレンスに対して参加者は様々な事を感じたと思う。(私のように否定的批判的な感覚が強い人は少ないかもしれないが・・・)

そんな私が「別の意味で奮起した」の意味であるが、「世代交代しないと情報学教育分野は開拓できないよ」という御大世代からのメッセージだと受け取ったからだ。

情報学教育に携わる者として襟を正す思いをしたコンファレンスであった。

(`・ω・´) キリッ

(T)

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コメント

TBありがとうございました。
この会議についてはいろいろ思うところもあるのですが、いろいろな学会の役員という立場もあり詳細はブログでは控えさせていただきました。

教員養成がおっついていない、というのは本当に実感します。
学生自身がまともな情報科教育を受けていない場合もあり、できるだけ外の世界をみせる、できれば連れて行きたいと考えているところです。

また、いろいろ議論させてくださいね。

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