「ムーアの法則」で情報科教育は変わるか? - 過剰と破壊の経済学
(T)
情報科の教員であれば「ムーアの法則」という言葉を一度は聞いたことがあるだろう。しかし、情報科教員との会話のなかでこの法則が出てくる事は稀だと思う。
ムーアの法則
「半導体の集積度は18カ月で2倍になる」
この法則が情報社会の一面を表現している事は確かだが、具体的な事はこの本を読んで初めて知った。
注目した部分を以下に記す。
1.情報の価値の定義式
本書では情報の価値をこのように定義している。その理由は次の通り。
身近な人の話題(分母が小さい)なら何時間でもおしゃべりできるし、どんな名些細なことでも話題になる。逆に、毎日1万人のアフリカ人がエイズで死んでいるというニュースは、いくら重要でも自分との距離が大きいので、話題にならない。他方、距離が大きくても、9・11のようなテロは新規性が高く、有名な芸能人の話題は娯楽性が高いので、情報としての商品価値がある。
この変数のうち、どの比重が高いかは人にもよるが、男性は新規性の、女性は娯楽性の比重が高いように見える。(以下略)
この後、テレビなどのマスメディアは分母を小さくできないので分子を大きくするような要素に注目してきたとか、Googleの検索広告やAmazonのオススメなどは分母を小さくする技術である事が紹介されている。授業で活用できる内容だと考える。
また、この定義式は経済学的視点だけでなく、情報伝達の授業でも扱えると感じる。プレゼンテーションを組み立てたり評価したりするときに、分かりやすい指標になると言えよう。
情報の価値の定義と言えば「情報エントリピー」と条件反射するなかれ。Well-definedであれば多様な定義がありえることは数学示している。
2.IT業界のマーフィーの法則
失敗するプロジェクトの十分条件として以下の4つを提示している。
1 最先端の技術を使い、これまで不可能だった新しい機能を追加する
2 数百の企業が参加するコンソーシャムによって標準化が進められる
3 政府が「研究会」や「推進協議会」をつくり補助金を出す
4 メディアが派手に取り上げ、「2010年には市場が**兆円になる」などと予測する
直後に、成功する必要条件として以下の4つを提示している。
1 要素技術はありふれたもので、サービスもすでにあるが、うまくいっていない
2 独立系の企業がオーナーの思い込みで開発し、いきなり商用化する
3 一企業の事業なので、政府は関心を持たない
4 最初はほとんど話題にならないので市場を独占し、事実上の標準となる
成功する必要条件は失敗する十分条件の逆を言っている。
情報社会の進展を説明するときに、この4条件を上手く使う事は出来ないだろうか。本書では成功の具体例として iモード、スカイプ、グーグル、iPod を上げている。時代とともに具体例も変わっていくだろうから、リアリティのある授業ができると考える。
■ ところで。。。
情報科教育には「IT業界のマーフィーの法則」と同様な側面があると感じている。
最先端の技術を使い新しい機能を追加したICT教育機器、情報関連組織の連携による提言、教育行政による補助金絡みの授業提案、メディアによる教育の情報化に関する報道。失敗する十分条件はいろいろと思い当たる。
一方、成功する必要条件を満たしている授業提案は数が少ない。独断と偏見によれば「computer science unplugged(コンピュータを使わない情報教育アンプラグドコンピュータサイエンス
)」や「アルゴロジック」あたりだろう。
情報科は情報社会に深く関する教科なのだから、情報科教育の進展も「IT業界のマーフィーの法則」を参考にしてはどうだろうか。
おまけ。
新書で提示された式を授業で扱うことに抵抗感が無いわけではないが、手段の一つと割り切ってしまってもよいと思う。
:-P
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