書籍・雑誌

2013年5月28日 (火)

情報科教員にとって勉強になる - 論文・レポートの基本

レポートの書き方について国語科教員と雑談をしていたら、『論文・レポートの基本』を紹介されたので読んでみた。

大学でのレポート作成(または、一部の高校で実施されている卒業論文作成)は、「社会と情報」の射程としては遠い。しかし、生徒に深く考えさせるレポートを作成させるには、この手の話題は避けて通れない。すぐに実践する事は難しいが、将来に向けて準備をしておく事は大切だ。

「社会と情報」に関係しそうな部分をメモで残す。

Wikipediaが引用文献に使えない理由(P.34)

Wikipediaを引用元に使うことには違和感があったのだが、その理由を明文化することができずにモヤモヤしていた。「Wikipediaは信憑性が低いので引用文献としては不向き」という主張は、Wikipediaの記事内容からすると適当ではない。

論文・レポートの基本』では、Wikipediaの記事は引用のパッチワークだから、記事のオリジナル文献を引用せよとしている。

(*゚Д゚)φ))ナルホド!!

2013年5月20日 (月)

情報科教員の教養科目 - 記号論への招待

「記号論」はキーワードとしは知っていたが、なかなか手が出なかった分野であった。国語科の教員に相談したところ、紹介されたのが『記号論への招待』である。

言語学を起点に書かれているので、遠く離れた門外漢にはかなりの難関であったが、読破した。「社会と情報」に関係しそうな部分もメモで残す。

1.「対立」と「中和」(P.115~)

情報とは何かという議論では、他の者との差異に注目することが多い。西垣通の定義(パターンをうみだすためのパターン)であっても、シャノンの定義(-log_2 P)であっても、差異に注目している。

記号論への招待』では「対立」という概念で差異が登場する。以下に引用してみる。

示唆的特徴*の前提となっているのは、二つの記号がその記号内容の規定に関していくつかの共通の特徴を有している上で、それぞれ異なる特徴を併せ持つことによって相互に区別されているという状況である。一般にこのような関係にある時、二つの記号は相互に「対立」するという。「対立」の概念には、【共通】性を踏まえた上での【差異】という意味合いが含まれているわけである。

示唆的特徴* 記号同士の差異を規定するものとして機能している特徴のこと

記号論への招待』P.114-115 【 】は傍点

赤太字…著者注

具体的な事例としてfather(父親)とmother(母親)が示されていた。この場合、「親」という共通性を踏まえた上での「性別(父、母)」という差異が見いだせることになる。

情報の本質が差異である事を示しているが、「共通性という土台の上での差異」であることが指摘されている。これは暗黙知として何となく理解していた事柄だけに、明文化された事が大きな収穫だ。

2.表示義(デノテーション)と共示義(コノテーション)(P.120~)

書籍では、<ばら>には花の薔薇という普通の意味作用があると同時に、<愛>という意味の意味作用があることが示されている。説明個所を引用してみる。

まず第一のレベルで、rose が<ばら>という記号内容を通じて意味作用を行う。この場合の記号内容が「表示義」である。次にすでに<ばら>という記号内容を含む rose という記号全体が記号表現となり、それが新しく<愛>という記号内容を得て、より高次のレベルで意味作用を行う。この場合の記号内容が「共示義」である。

記号論への招待』P.120-121

私は、「言葉には文字通りの意味作用(表示義:デノテーション)」、「言葉に含まれたメタ的な意味作用(共示義:デノテーション)」と理解した。

プレゼンテーションにおけるワーディングの指導につなげられるかもしれない。内容の抽象度を考えると、選択科目向きかもしれない。

■雑感

第IV章(最終章:記号論の拡がり)では、文化記号論への展開が少しだけ紹介されている。情報社会を学習ターゲットとしている「社会と情報」は、いわゆる記号論というよりも文化記号論の方に接点があると考える。

直感的にはマーシャル・マクルーハンの名言”The medium is the message.”との関連で「社会と情報」の社会情報学的な授業の展開に結び付きそうだ。

「社会と情報」にはどんなコノテーションがあるのだろう・・・

2013年4月 8日 (月)

スーパーパノプティコン社会の表裏 - 監視社会

社会学の研究者とプライバシーや個人情報について話をしたところ、監視社会を紹介されたので読んでみた。

門外漢が頑張って読破した結果、注目した部分をメモに残す。

1.人間は「身体と魂と(     )

個人のアイデンティティー登録様式について、著者のライアンは過去(1994年)にこう指摘している。

あるロシアの格言によれば人間は「身体と魂とパスポート」からできているそうで、数年前に私は、これを今日風に言うと「身体と魂とクレジットカード」となると述べた。二十世紀において、個人のアイデンティティーの登録様が、国家の必要とする主に書類形式から、商業ビジネスの必要とする電子的に保存されるデータへの増殖へと変化したというのが、当時の私の論点だった。(監視社会 P.120 太字は筆者)

ここでいう当時というのは1994年であるから、20年近く経過した今日(2013年)であれば別の状態だと考えるのが自然だろう。そこで、生徒達に考えさせたい課題がある。

問:情報化された現代社会を、ロシアの格言風に表現し、説明せよ。

コンピュータ化以前:人間は「身体と魂とパスポート」
コンピュータ化以降:人間は「身体と魂とクレジットカード」
情報化された現代社会:人間は「身体と魂と(          )」

SNSと答えるだろうか。クラウドと答えるだろうか。スマートフォンと答えるだろうか。

どのように説明するだろうか。

2.「事後的対応」から「予見的先制行動」へ

監視といえば、監視カメラのように有事の際に活用できる情報を収集するといった事を連想するようだが、本書は次のステップに向かっていると指摘する。

かくして、これらの組織に有用な一定の緒カテゴリーに沿って個人が作り上げられ、それが、犯罪行動の除去や少なくともその最小化の試みに用いられるデータベースを生み出す。今日の警察の関心事は、事後的に犯罪者を逮捕する事ではなく、犯罪行動を先取りすること、リスク計算に基づいてそれを類型化し、抑制・阻止することの方にある。(監視社会 P.244-245)

引用部分は警察について述べているが、商業的利用や個人認証といった幅広い範囲で「事後的対応」から「先見的先制行動」へ関心や実態が移っていることが述べられている。

情報社会においても様々な個人情報は収集されているが、その目的は「先見的先制行動」である。facebookといったSNSでは利用者の行動を収集し、ターゲットマーケティングに活用しているし、生体認証で登録している生体情報は監視というよりも個人認証によるプライバシーの強化がなされている。

この図式は年々変化するだろうが、生徒達にとっては実感の湧きやすい部分だろう。

3.訳者のあとがき

訳者のあとがきが書籍全体をうまく要約していて、門外漢にとっては大変ありがたい。その中でも「社会と情報」と使えそうだと直感した部分を紹介する。

監視社会-監視=(よりよい)社会」という等式は成立しない。
監視社会 P.303)太赤字は筆者

生徒達は「監視=悪」という固定観念を持っているかもしれないし、「監視」という単語には悪い印象を持っているかもしれない。

しかし、情報社会における監視には様々な側面がある事は事実である。生徒達の思い込みを突き崩し、一歩進んだ理解を促す授業には、使える等式だと直感する。

■雑感

事前に「一九八四年新訳版 [ ジョージ・オーエル ]」を読んでおくと理解が進む。

2013年1月 6日 (日)

情報化で変わった事と変わらない事 - ウェブ炎上

2007年出版の書籍ではあるが、何かと話題になっているので読んでみた。著者はいわゆる気鋭の人文系評論家。

以下、注目した部分をメモに残す。

■サイバーカスケードの分析

取り扱いは第2章。そこに出てくるキーワードを列挙してみる。

  • デイリー・ミー
  • エコーチェンバー
  • クラスター化
  • デリート・ユー
  • サイバーカスケード
  • アーキテクチャ

ウェブ炎上を理解するための基礎知識であるが、ウェブ炎上以外の社会現象を理解/説明するのにも有用である。いわゆる情報モラルの指導のバックボーンにもなるだろう。

他にもサイバーカスケードに関する具体的な事例や「ハイパーリアリティ」、「第三者効果」、「鮫島事件」といった重要事項が記載されている。

「社会と情報」でいえば

  • (1)-ア 情報とメディアの特徴
  • (2)-ア コミュニケーション手段の発達
  • (3)-ア 情報科が社会に及ぼす影響と課題
  • (4)-イ 情報システムと人間

が該当箇所だろう。「社会と情報」の授業で社会情報学を意識した授業ができる可能性は高い。挑戦する価値があると考える。

■雑感

これ一冊では授業準備には不足である。毎度のことではあるが、積読が増えるのだ。

トホホ(;ω;)

【送料無料】ウェブ炎上 [ 荻上チキ ]


追記:著者のブログに正誤情報が掲載されていた。

荻上チキ『ウェブ炎上』(ちくま新書)発売記念ページ

2012年11月13日 (火)

情報社会の基礎知識としてのリスク - 「ゼロリスク社会」の罠

情報科では新しい技術やサービスが日々登場している。新しい事を始めるときはリスクがつきものである。そのリスクについて分かりやすく取り上げているのが「ゼロリスク社会」の罠だ。

著者はサイエンスライターである。具体例は科学(化学)的なものが多いが、「社会と情報」と関係する内容も多いと感じた。

以下、注目した部分をメモに残す。

■リスクの定義、など

「第1章 人はなぜ、リスクを読み間違えるのか」はリスクの特徴をコンパクトに紹介されている。第1章の小見出しは

  • リスクという言葉の定義
  • リスク認知因子10カ条
  • 確証バイアス
  • バイアスのハウリング
  • 正常性バイアス
  • アンカリング効果
  • レインマンの罠
  • 定性分析と定量分析

などなど。小見出しだけでも興味深いものが多い。バイアスのハウリングはエコーチェンバーとしても説明ができ、授業が広がるの可能性を感じる。

リスク認知因子10カ条には「恐怖心」「制御可能性」「選択可能性」「新しいリスク」「リスクとベネフィット」といったものは、いわゆる情報モラル教育を論理的に進めるには関連性が高い。

LINEのような新しいサービスに対して生徒達は「制御可能性」や「選択可能性」が高いと感じ、「リスクよりもベネフィットを大きく見積もっている(またはリスクを小さく見積もっている)」と考える。制御可能性や選択可能性、リスクとベネフィットを判断する基礎知識を社会と情報の授業で扱いたい。

同時に、LINEのような新しいサービスに対して旧世代は「制御可能性」や「選択可能性」が低いと感じ、「リスクよりもベネフィットを小さく見積もっている(またはリスクを大きく見積もっている)」と考える。情報科の教員として、日々精進が必要だ。

■雑感

小説に始まり電話やラジオ、テレビなど新しいメディアの「新しいリスク」を過大評価して批判するのは理解の浅い旧世代の行動習性だろう。歴史は繰り返す。(P.31)

:-P

「ゼロリスク社会」の罠

2012年11月 8日 (木)

著作権法改正の背景がわかる(2/2) - 解説改正著作権法

前エントリー(著作権法改正の背景がわかる(1/2) - 解説改正著作権法)の続き。

過去の話になるが、「解説 改正著作権法」を読んだ。

注目した部分をメモに残す。(その2)

■権利者(P.42)

著作権は創作者に経済的な利益がもたらされるという経済的な側面があるが、これは著名な創作者に顕著に当てはまる事であり、無名の創作者にとっては知名度を上げる事の方が優先される。該当箇所を引用する。

 なお、権利者団体の要求は、個々の権利者のレベルでの要求とは必ずしも一致しているわけではない。たとえば、十分な知名度と十分な交渉力を有しない無名の創作者の場合、著作物が利用されないまま埋もれ、あるいは利用許諾条件の交渉に際してメディア企業に買いたたかれるよりも、むしろ著作物の利用を促進する事を希望するであろう。

解説 改正著作権法

例えば、有名アーティストであれば音楽CDの売り上げやや音楽ファイルの課金、コンサートにより収入(チケット収入ではなく各種グッズ販売による売り上げの事)を得ることが可能である。一方、メジャーデビューを目論むインディーズバンドであれば知名度を上げることが優先順位が高く、CDやコンサートによる収入は有名になってからの事である。勤務校出身のインディーズバンドのCDが入手できるなら、生徒達にとって身近な教材になるだろう。

考えさせる教材としては表による分類がある。試しに表の中を埋めてみた。

有名アーティスト 無名アーティスト
著作権収入 行き詰り 有名になってから
知名度の上昇 維持する 最優先

確認問題であれば語群から選ばせるのもよいだろう。

考えさせる問題として、この表を提示してから

  • 無名アーティストは知名度を上げるためにネット上でどのような活動をしているか
  • 無名アーティストにとって著作権はどのような存在か
  • 有名アーティストはCDによる著作権収入の減少に対してどのように対応しているか

を考えさせるのもよい。この後に「新しい著作権制度」を提案させるのも一つの方法だ。

このような記述・論述系の課題は著作権法の理解が必要不可欠であるが、解答できたときの収穫はより大きい。

■おまけ

資料3の年表の2007年12月の欄に中山信弘『著作権法』(有斐閣)が掲載されている。

■まとめ

法改正のたびにその背景を学ぶ必要がある。より良い授業には深い理解が必要だ。情報科教員にお薦めの一冊である。

解説 改正著作権法

2012年11月 5日 (月)

著作権法改正の背景がわかる(1/2) - 解説改正著作権法

情報科では情報モラルというカテゴリーで著作権を扱っている。著作権法改正のたびに教える内容が変わる可能性がある。

過去の話になるが、「解説 改正著作権法」を読んだ。

私は情報科教員ということで、

第1章 2009年改正の意義と歴史的な位置づけ
第2章 近時の議論の整理
第3章 2009年改正の解説
第4章 一般的フェアユース規定実現への課題と展望

だけを読んだ。「第5章 世界の動向」まで読む余裕が無いので勘弁。

注目した部分をメモに残す。

■私的録音録画補償金制度、私的複製の範囲(P.21~22)

教科書ではお馴染みの私的録音録画補償金制度であるが、著作権法が情報化に対応したといった程度の扱いである。事実、授業でも

 【この制度で集めたお金がアーティストへ還元される】

といった扱いが多いと思う。しかしながら、事はそう単純ではない。本書では重要な事が指摘されているので、やや長いが以下に引用する。

著作権者等(注1)の団体は、著作物の利用の対価として適正な補償金を要求し、また、補償金の課金対象を拡大すべきだと主張する。これに対し、デジタル方式の録音録画機器を製造販売しているメーカーは、私的複製については契約とデジタル情報保護技術によって制御可能であるから補償金制度は不要であると主張し、特にいわゆるダビング10対象機器について、補償金を上乗せして販売しなければならない事について強く反発している。(注

(注1)著作権者等とは創作者、著作権者、著作権管理団体を含む

(注(前略)なお消費者の立場からすると、自由な複製ができることを望むから、消費者が補償金を負担したくないというのは当然と言える。しかし、回数制限なく複製ができる代わりに僅かな補償金を支払うことにする制度は、回数制限などの技術により著作者などを保護する制度よりも、消費者のニーズに沿うという見方もできる。

解説 改正著作権法

授業で使えそうなのは権利者、メーカー、利用者それぞれの立場である。

  • 権利者は補償金による適正な対価の収入
  • メーカーはDRM対象機器に補償金を上乗せして販売する事の不利益
  • 消費者は複製の回数制限と補償金の支払いという二重負担

授業を受けるのは生徒であるから、メーカー側の不利益につては触れなくともよいだろう。しかし、複製の回数制限と補償金の支払いという二重負担について教材になりうる。

例えば【複製の回数制限】と【補償金の支払い】のどちらが権利者と消費者の双方にとってメリットがあると言えるかを考えさせる教材がありうる。事前に調査をさせて発表させてもよいし、定期試験の論述問題として出題してもよい。複製が容易なデジタル情報の権利処理という課題は、情報科で扱うのが自然だと考える。

長くなったので、続きは別エントリー。

著作権法改正の背景がわかる(2/2) - 解説改正著作権法

2012年10月11日 (木)

ヤフー・トピックスの中の人 - ヤフー・トピックスの作り方

Yahoo! Japan トップページに表示されるニュースの中に「トピックス」という欄がある。本書ではヤフー・トピックスに関するあれやこれやを中の人が紹介している。

ヤフーニュースは情報科の授業でも扱うこがあるので興味本位半分で読んだのだが、収穫色々。今回はその中でも速効性があるであろう内容を紹介する。

■一目でわかる見出しの字数

ヤフートピックスでは、見出しの字数制限が13.5文字(0.5文字は半角のこと)と決まっている。この根拠は中の人達の経験則だそうだが、後に京都大学大学院の研究により

「1停留中に知覚される文字数は9~13文字」

タイトルは13文字までが適切?

という科学的根拠が提示される。

この科学的根拠の存在は非常に重要である。なぜなら、学習内容が論理的であれば生徒達は学習によってその内容を習得する事ができるからである。学習内容がセンスに依存している場合、センスの有無で習得が決まるので必履修科目には馴染まないからだ。

例えば、プレゼンテーションの授業で生徒にスライドを下書きさせるとき、教員が指導する指標として使うことができる。プレゼンテーションの授業では、スライドは印象を与えることが主たる役割であって、論理や物語を語るのはプレゼンターの役割である。このため、スライドにのせる言葉はキーワードだけとなるが、生徒にしてみれば制約条件があった方が結果が出しやすい。(短歌や俳句の例を出すまでもなく、制約条件が創造力の原動力になるのは良く知られた事実だ)

■まとめ

上記以外にも既存のメディアと新しいメディアの比較も扱っており興味深い内容である。

現在進行形のヤフーを知る一冊。是非ご一読を。

2012年3月21日 (水)

思い切って読んでみよう - 1984年

(T)

ビッグブラザーというキーワードは知っていたのだが、そのキーワードが登場する小説『一九八四年[新訳版]』は長編という事もあり敬遠していた。だが、「社会と情報」で個人データやプライバシーを扱う以上読まないわけにはいかない。思い切って読んでみた。

この小説にはコミカライズ作品が2つあるので、同時に読んでみた。

小説なので核心に触れる部分に触れる事は出来ないが、注目した部分をメモする。

■「読んだふり本」第一位

訳者のあとがきによると

 (前略)しかも英国での「読んだふり本」第一位がオーウェルの『一九八四年』だというのである。一九八三年から八四年にかけて英国に滞在した折、『一九八四年』が何ヶ月かにわたって、ベストセラー・リストのトップを走っていたと記憶するのだが、あのときのペンギン版はかわれたまま書棚にしまわれたのだろうか。(後略)

一九八四年[新訳版]』訳者あとがきより

だそうである。

512ページのというページ数は小説をほとんど読まない層にはドン引きだが、実際に読んでみると負担感はほとんど感じなかった。小説読まずの私が数日で読破できたのだから、多くに人が読破可能だと思う。

プチカミングアウト。私は「ビッグブラザー」というキーワードは知っていたが『一九八四年[新訳版]』という書名を知らなかった。

■コミカライズ作品

詳細はコメントできないが、コミカライズ作品『まんがで読破 1984年』と『COMIC 1984 』はいくつかの内容が割愛ないし圧縮されている。コミカライズ作品を読むことで、改めて原作が良くできていると感じた。一般論として、コミカライズ作品を読む場合は原作を読んだ後の方が良い。

余談だが、『まんがで読破 1984年』はまんがで読破100冊目のタイトルだそうだ。

■社会と情報との関連

本書のキーワードである「ビッグブラザー」や「テレスクリーン」は情報社会と関連がある。

例えば、「Googleは情報社会のBig Brotherなのか?」とか「ステルスマーケティングやcookieは現代版テレスクリーンなのか?」とかが考えられる。

特にGoogleの影響力は非常に大きいので、個人情報やプライバシーと関連させた授業は必要だろう。収集した個人情報に関しては、社会学やら経済学やら法学やら、様々なアプローチが可能だ。

是非、一読を。

一九八四年[新訳版]

まんがで読破 1984年

COMIC 1984

2012年2月17日 (金)

情報社会への歴史的経緯を知る手掛かり - 情報社会を読み解く(改訂版)

(T)

社会学の先生に情報社会を読み解く改訂版を紹介されたので読んでみた。初版は2004年3月であるが、私が読んだのは2011年5月の改訂版。

前半は情報社会について、後半は教育の情報化と情報科教育について書かれている。

注目した部分を以下にメモする。

■「社会的技術」に注目した社会の変遷

情報科の授業では現時点での情報社会を取り扱うが、直接扱ってもその特徴は見えてこない。授業で使えそうなネタとして、自分は歴史的経緯や過去との比較に注目している。本書が紹介しているのは以下の3つ。

1)ダニエル・ベルの「前工業社会」→「工業社会」→「脱工業社会」

2)アルビン・トフラーの「農業社会(第一の波)」→「工業社会(第二の波)」→「超産業社会(第三の波)」

3)増田米二の「狩猟社会」→「農耕社会」→「工業社会」→「情報社会」

増田米二氏が提示した社会の変遷は「社会的技術」に注目している。まとめとして[社会的技術]-[人間の能力の増幅]-[学力基盤]の関連が提示されていて授業に活かせると考える。

注意点もあると感じている。それは、学力基盤が変わったと読めてしまうことだ。現実には学力基盤が積み重なっていると考える。例えば、言語の運用は昔も今も学力基盤である。情報技術が発達したからと言って、過去の学力基盤が不要になったわけではない。

「聞く+話す+読む+書く」だとか「暗記」だとか「計算」だとかといったものは今後不要になるわけではない。情報社会ではこれら従前の学習活動に加えて「情報活用能力」や「情報の科学的な理解」、「情報技術の習得」などが要求される。

ときどき「ICTで学びが変わる」という声を聞くが、本質的に変化するとは考えにくい。むしろ「ICTで学ぶことが多くなる」と考える。

■まとめ

序章「情報社会を読み解く鍵としてもメディア」、第1章「情報社会information societyの特質をどう捉えるか」、第2章「我が国における情報社会の進展」は収穫がいろいろ。

第3章「情報社会における人間関係と倫理と法」、第4章「『教育の情報科』と情報教育」、第5章「情報教育とコンピュータの教育利用」、第6章「情報教育の展開―新しい社会を創造する人間育成」は教養として読むということで。

:-P

別件だが、キャプテンシステムの存在を初めて知った。

是非、ご一読。

情報社会を読み解く改訂版

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